ボスとの出会い
ボスと出会った時のことを書いておいたほうがいいね。
僕とボスが出会ったのは、もう10年よりもっと前だ。僕らはあるパーティーで知り合った。その日ボスがそこに来るのを、みんなが楽しみにしていた。なぜって、ボスはデザイナーで、デザインしたものはいつも見ていたけど会うのは誰もがはじめてだったからさ。ボスのデザインはかっこ良くて、その頃みんなが憧れたものだった。
僕らは挨拶をした後、そのまま夢中でお喋りを続けた。そしてパーティーが終わる頃、そこを抜け出して踊りに行ったんだ。僕らは朝方まではしゃいだ。とにかく楽しくてしかたがなかったんだ。
ひと晩で親友になった僕らは、よく連れ立って宇田川町へレコードを掘りに行った。レコードを「掘る」なんてへんな言い方だけど、レコードはじっさい一枚一枚地味に掘るものなんだ。
ロックばかり聴いていた僕に、ボスはいろいろな音楽を教えてくれた。スピリチュアル・ジャズやアンダーグラウンド・ヒップホップ、それまで聴いたことのない音ばかりで、一緒にいると発見の連続だったよ。
たとえば、ファラオ・サンダースを教えてくれたのもボスだった。メッセージ性や精神性の強い音楽が多かったね。
この頃、僕らは夢のように楽しい時間を過ごした。
だけど僕と出会ったせいで、ボスに変化が起きていた。僕は、ボスが突然冷たくなったり、おかしなことを言う理由がまるでわからなかった。ボスはこの時、幻聴や幻覚がどんどんひどくなっていくことに一人で悩んでいたんだ。
いま思うと、宇宙船で一緒にやって来た仲間に出会ったせいで、ボスの覚醒がはじまってしまったんだね。
僕はそんなことには気がつかず、ボロボロになっていくボスをどうすることもできなかった。そしてボスは最初の入院をすることになったんだ。