Wanderers - 宇宙から来た僕

ある日、自分が宇宙から来たと知った “僕” の冒険

宇宙ステーションの記憶

僕が「自分は宇宙から来た」ってことをすんなりと受け入れられたのは、夢の中で何度か宇宙ステーションのようなところにいたのをはっきりと覚えているからだ。

残念ながら、その夢にボスは登場しない。登場していたのかもしれないけど、記憶には残っていないんだ。

そこは宇宙ステーションなのか、巨大な宇宙船の中なのかはわからない。とにかくその場所で、僕は月に似た殺風景で荒涼とした星をずっと観察しているんだ。

じっさいには僕が観察していたのは星そのものじゃない。その星で働いているダーリンだ。ダーリンはなにかの調査をしたり、時々乗り物に乗って砂漠で遊んだりしている。僕はいつもその様子を見守って、ときどき交信していた。

ある時ダーリンに「小さい頃はどんな子どもだったの?」と聞いた事がある。「おばあちゃんが言うには」と前置いたうえで

「夜になると、いつも月に話しかけている子どもだったらしいよ」

と教えてくれた。

僕はこの話を長いこと忘れていた。自分が宇宙船に乗って地球に来たと知った後に、ふと思い出したんだ。

夢の中で月のような星にいたダーリンと、じっさいに月と話す子どもだったダーリン。なにか関連がありそうだけど、僕にはまるでわからなかった。ヒントがほしくなった僕は、思い切ってこの夢の話をしてみたんだ。だけど、ただの夢の話で終わってしまった。

がっかりしたついでに「夢の中なのに離れたところにいてさ、残念だったよ」と言った僕に、ダーリンは「夢の中にいるって認識があるんだね?」と言った。

そうだ。僕は、この夢をみる時いつも、それが夢の中だと知っていたんだ。