Wanderers - 宇宙から来た僕

ある日、自分が宇宙から来たと知った “僕” の冒険

ボスとの対話

僕は仕事に行くのが待ち遠しかった。もちろんボスと早く話がしたかったからだ。

…突然こんな話をして大丈夫だろうか?

一瞬ためらったけど、とっとと話そうと思った。どうせ、ボスには何も隠せやしないんだ。僕はボスをお昼ごはんに誘って、あらいざらい話した。

僕らが宇宙船に乗って地球に来たこと。

ボスがそのグループの長だということ。

ボスの幻聴は人の「思い」を拾う、テレパシーのようなものだったということ。

心の病気ではないということ。

そしてボスはいつか地球のために大きな仕事をするらしいこと。

ボスは静かに聞いていた。僕は「どう思う?」と馬鹿げた質問をしてしまった。もう少し気のきいた言い方があっただろうにね。

「どうって言われても、いきなり100%は信じられないよ」

ボスはそう言いながら、なにか考えているみたいだった。僕は待とうと思った。

それから数日後、ボスは僕の先生に一度会ってみたいと言った。僕の伝えたことをある程度受け入れてくれたみたいだった。

ボスの心を開いたのは、先生が言った「よく生きていてくれました」という言葉だったようだ。

「いままでわからないことだらけで生きて来た。この苦しみをわかってくれる人がいて、はじめて救われた。」

そう話している時、ボスは涙ぐんでいるように見えた。誰にもわかってもらえない苦しみを本当にわかってもらえた時、人はこんなにも心を動かされるんだ。僕はそう思って、先生の大きなやさしさに感動していた。